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  ナースのための生理学

専門書店で探しても、生理学をやさしく解説している本は少ないようです。
看護大学の教科書用に著述した“ナースのための医用機器:コロナ社”の、生理学原稿を更に読みやすくまとめました。
多くの原著にあたり、呼吸器や生化学権威のご指導を戴きました。
ナースをめざす皆さんのお役に立てば幸いです。
コピーした図が不鮮明ですが、ご勘弁ください。少し難しいことも書きましたが、そんなことが書いてあったなと思う程度で良いでしょう。
                                      宮本 啓一



1.からだのなりたち


 生命は、外界と区別され、エネルギーを取り込み、子孫を残します。
 そのむかし、小さな生命が誕生した頃に、タンパク質と海水を区分する膜ができたようです。そして、少しずつ他の生命を取り込み、複雑な構造に進化したようです。膜で覆われた中にいろいろな構造が取り込まれて一つの細胞となり、この細胞が集まって動植物に進化したのでしょう。
 成人では、60%が水分です。若い頃はみずけがおおく、少しずつ枯れてくるようです。


●1.1 からだの成分
 成人男子では、体重の18%はタンパク質、15%は脂肪、7%は塩類(えんるい)、残り60%は水分です。水分は性別・年齢別で差があり、体重の46〜61%になるらしいです。
 塩類とは、食塩(NaCl)のような、酸と塩基(えんき)(アルカリ)が化合したもので、水中でイオン(電解質という)になる物質のことです。カルシウム(Ca)はイオンになれば(Ca)と表示します。
 体内の水分は、塩類や様々な成分を溶(と)かしており体液と呼ばれています。この体液は細胞内液と細胞外液に大別され、細胞内液は体重の約40〜45%、細胞外液は約20%になるとのことです。
 細胞外液は血液の主成分で血管内にある血漿(けっしょう)(約5%)と、各細胞のすき間にあったリンパ液・脳脊髄液・消化管液などとして存在する間質(かんしつ)(約15%)に分けられます。赤血球は、ヘモグロビンを主成分としたタンパク質・塩類などで出来ており、体重の約3%になります。血液は血漿中に赤血球があるので、全血液量は体重の約8%になります。
 細胞内液は、細胞膜の内側にあります。細胞内にはミトコンドリアなどの細胞小器官があり、細胞内液は細胞の71〜75%を占めます。
 以上をまとめると次のようになります。

f 体 液 60%
     ┣細胞内液 40〜45%
     ┗細胞外液 20%
            ┣血 漿 5%(全血液量=8%)
            ┗間質液 15%

f タンパク 質  18%
f 脂    肪  15%
f 塩    類   7%
f 合    計  100%
表1−1 ヒトの構成成分

 体細胞は、そのむかしの海水組成に近い細胞外液に囲まれています。細胞外液と細胞内液では、含まれるイオンの濃度が異なります。細胞内/外のイオン濃度は次のようになります。


 
細 胞 外 液
細胞内液
血  漿
間 質 液
Na
K
Cl
Ca
Mg
(ナトリウム)
(カリウム)
(塩素)
(カルシウム)
(マグネシウム)
152
4〜5
113

143
4〜5
117

14
157


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表1−2 体液のイオン濃度   単位:mEq/リットル
      

 この濃度差を利用して、種々の物質が膜を通過します。NaとKの差に注意が必要です(2.1 神経の信号伝播(でんば)で解説)

 ☆Eq(イクイバレント:当量(とうりょう)):原子または分子6×10個の重量(1mol:モル)をイオン価(か)で割ったものであり、水1L中にKが39gあると1Eq/リットル、39mgあると1mEq/リットルになる。上表の血漿のmEq/リットルをg/リットルに置き換えると、次のようになる。

  Na152mEq/リットル
  K 4.5
  Ca 5
  Mg 3
:23×152 ×0.001 = 3.50 g/リットル
:39×4.5 ×0.001 = 0.18
:40÷2×5×0.001 = 0.10
:24÷2×3×0.001 = 0.04


●1.2 体内の物質代謝


 体内での物質の交換を物質代謝と言います。物質は、細胞膜をはさんで血圧と濃度の勾配(こうはい)による浸透圧とタンパク質の働きで、膜間(まくかん)で交換されます。細胞内液は、間質液との間で交換を行います。間質液は、血漿との間で交換を行います。
 血漿は心臓の拍出によって血管内を循環(じゅんかん)して、間質液を通じて肺で赤血球(ヘモグロビン)の助けで酸素を受け取り、おもに重炭酸イオンの状態で溶解していた炭酸ガスを排出します。また、消化器で栄養素を吸収し、脳・筋肉を含む全組織に酸素と栄養素を供給して、炭酸ガスと老廃物を受け取ります。
 一例として、酸素の運搬はどのようになされるかを表1−3に示してみます。
 酸素が細胞小器官に到達するのに、いかに多くの壁をくぐり抜けているかが分かります。

肺胞気
↓肺胞細胞
(150mmHg)
間質液
↓肺毛細血管細胞
血漿
↓赤血球細胞膜

血液による運搬 (90mmHg)
赤血球細胞内液
ヘモグロビン
赤血球細胞内液
↓赤血球細胞膜
血漿
↓末梢毛細血管細胞
間質液
↓組織細胞膜
細胞内液
細胞小器官(ミトコンドリア等)
(0.1mmHg)
表1−3 酸素の運搬経路
( )内は酸素分圧

 ☆これはまるで夏に氷を運ぶようなものだ。暑い道中にはこれほど関所(せきしょ)があると、細胞小器官でつかえる氷はほとんどなくなる。肺胞気では100kg持っていたのに、細胞小器官に届(とど)いたときにはたったの1kgか100gになってしまう。それでも細胞内でエネルギー源を作るミトコンドリアは、ミゾレ一杯分くらいの少ない酸素を使用して黙々(もくもく)と働くのでエライ!


●1.3 浸透圧(しんとうあつ)


 ナメクジに食塩をかけると、ナメクジは脱水されます。水分が表皮(ひょうひ)を通って食塩方向に移動するからです。

☆ナメクジに塩、青菜に塩もまさに浸透圧。

 物質を選択的に通過させる(溶かした溶媒(ようばい)の水は通すが、溶けた溶質(ようしつ)は通さない)膜を半透膜(はんとうまく)と言います。選択的とは、図1−1のように純水(A)と食塩を水に溶解した液(B)とを半透膜をはさんで接すると、(A)の水は(B)に移動しますが、(B)の食塩は(A)に移動できないことを言います。この結果、図の右のようになります。この水を移動させる圧力が浸透圧です。

図1−1 浸透圧模式図(もしきず)

 物質は分子の状態で溶解または電離してイオンとなり、浸透圧はこれらの濃度に比例します。食塩のような電解質は、水中ではNaCl⇔Na+Clのように電離して各イオンが一つの分子とおなじ単位で作用するので、電解質の浸透圧はこれらのイオンの濃度に比例します。
 細胞膜は半透膜であり水などの小さい分子は透過できますが、イオンや大きい分子は通過しにくいのです。セロファン膜もこの性質を持ちますが、生きている細胞膜はセロファン膜と異なり、膜をはさんで内/外液のイオンを交換できます。

 ☆浸透圧調節:細胞外液の電解質の90%はNaやClで、細胞内液は
K、MgやHPO4(りん酸1水素イオン)などを含んで、内/外液のイオンは著しく異なっている。しかし、このイオン勾配(こうはい)で浸透圧はほぼ等しく保たれている。
 細胞が死ぬと、この内/外液のイオン勾配はみられなくなる。また、腎尿細管もNaを移動させて生じた浸透圧を大いに利用して、体液量と尿量の調節を行っている。
 ☆浸透圧:P=RCT 浸透圧は、気体定数(0.082)×モル濃度×絶対温度で決まる。



●1.4 膜間の物質交換


  細胞膜で働いている酵素は、固有の物質(基質)を反応させたり、膜を通して物質を移動させたりします。

図1−2 細胞膜の構造

 細胞膜は主に膜タンパク質と、親水性(水になじむ)のりん酸質と疎水(そすい)(水になじまない)の脂質が結合したりん脂質分子で構成されています。
 細胞膜は上図のような脂質部分で互いに向かい合った二重の膜であり、親水性のりん酸質部分が細胞内液と外液に面していて、二重膜の間に膜タンパク質があります。
 この膜タンパク質の性質は、細胞内外の情報伝達や物質交換をする働きを持ちます。例えば、腎尿細管で働く酵素Na−KATPアーゼは膜に孔(イオンチャンネル)を形成して、能動輸送によりNaとKの交換をします。交換される物質は、このように主に酵素の働きで孔を通過します。この酵素の存在を制御しながら浸透圧を利用することにより、膜間で物質を交換して生体の活動を続けるのです。

 ☆イオンチャンネル:細胞の内/外液に含まれるイオン(Ca,K,Clなど)の通路(チャンネル)として働く膜タンパク質のことで、膜を貫通(かんつう)した孔を形成している。神経細胞のNaチャンネルや心筋細胞のCaチャンネルなどがある。開閉機構の違いから、電位依存(いぞん)性イオンチャンネルと配位子(リガンド)依存性イオンチャンネルに大別される。前者は細胞膜の電位変化を感知して、後者はアセチルコリンやグルタミン酸などの化学物質の結合を感知して、チャンネルが開く。
☆能動輸送:エネルギーを用いた輸送のことである。例えば、Naは、細胞内(低濃度側)から細胞外(高濃度側)へと運搬される。これは電気化学的勾配(濃度勾配)に逆らう移動なので、エネルギーを消費した積極的な輸送が必要である。膜タンパク質である Na−KATPアーゼは、このNaの輸送を行っているので、Naポンプと呼ばれる。この輸送に使用するエネルギーは、Na−KATPアーゼがATP(アデノシン三りん酸)を分解することによって与えられる。
 その他に受動輸送がある。エネルギーを消耗しない電気化学的勾配のみによって移動する輸送である。